BREIMEN MAJOR 1st ONEMAN TOUR「AVEANTING」

2023年、メジャー移籍を発表した5人組オルタナティヴファンクバンド、BREIMEN。ファン待望のメジャー1stアルバム『AVEANTIN』が4月3日にリリースされた。限界まで追い込んで制作されたという極上のアルバムを引っ下げて行われたツアー初日の模様を、高木祥太(Vo,Ba)とサトウカツシロ(Gt)の機材に注目してレポートする。

Precision BassとAmerican Vintage II 1957 Stratocasterの対比が楽曲に彩りを与える

「メジャーだろうがインディーだろうが、俺たちはずっとカッコいい音楽をやり続ける」

そう高木がMCで語った言葉こそ、BREIMENの大きな魅力だ。

バンドでは初となったホールでの公演。大きなステージと座席もある広い空間で行なわれた、メジャー1stアルバムリリース後初となるライヴは、開演前の客席から大きな期待感が感じられるようだった。昨年、全国8都市を廻るワンマンツアー〈COME BACK TO BREIMEN JAPAN TOUR 2023〉も成功させた彼ら。“同期を使わない”と公言する彼らは、新たなアルバムに収録された曲をどのように演奏し、オーディエンスと共にどんなグルーヴを作り出すのか。そんな期待感が否応なく高まっていく。


パーティーの始まりを告げる鐘のごとく、分厚いSEが鳴り響き高揚感を煽りながらカウントで演奏が始まると、ファンキーな演奏で会場を温めていく。新作でも冒頭に収録された「a veantin」。エッジの効いた存在感のあるカッティングで、グルーヴ感を演出するサトウが手にしていたのは、ピックアップやブリッジ交換などのフルカスタマイズが施されたフェンダーのAmerican Vintage II 1957 Stratocaster。一見するとレリックされたブラックに見えたが、下地にはメタリックなパープルカラーが塗られたマルチレイヤー。長年メインで使ってきたFender Custom ShopのJazzmaster Journeyman Relicも、下地がピンク・ペイズリーとなっていることから、このルックスがお気に入りなのだろう。今回、この新たなAmerican Vintage II 1957 Stratocasterが大活躍した。


対して高木は、愛用する1966年製のCandy Apple RedのPrecision Bassで、ドラムのSo Kanno と共にBREIMENらしいダンサブルなグルーヴ感を生み出していく。ヴィンテージらしい太く存在感のある音は、バンドサウンドに圧倒的な厚みを生む。その上を、いけだゆうた(Kb)のシンセサウンド、ジョージ林(Sax)のサックスが縦横無尽に泳いでいく。1曲目から“まさにBREIMEN”というジャンルを見せつけられるような、らしさ全開の演奏で客席は一気にヒートアップした。


「ODORANAI」も高木はPrecision BassでサトウはAmerican Vintage II 1957 Stratocasterという組み合わせだが、踊るような分厚いベースサウンドの合間を縫うように、トレブリーでエッジの効いたカッティングが鳴り響き、その対比がBREIMENの曲に彩りを与えていた。この曲の途中にファンはクラップで反応し、さらに高木の“ジャンプ!ジャンプ!ジャンプ!”の声に呼応して飛び跳ねる。まだ序盤にも関わらず、すでに会場は大盛り上がり。曲の終わりには、自然とさらなる演奏を求めるアンコールの時のような手拍子まで沸き起こった。ツアー初日だが、最初から出し惜しみなし。さらにスケールアップしたバンドの圧倒的なパフォーマンスを見せつけられた。


高木が66年製のPrecision Bassに加え、同じくらいの頻度で手にしていたのがKing Gnuのベーシスト、新井和輝のシグネイチャーモデルDeluxe Jazz Bass V Kazuki Arai Editionのフルカスタムだ。それをベースに、フロントをPrecision Bassのピックアップに交換しPJ化。さらにヴィンテージ同様のCandy Apple Redにリフィニッシュするなど、かなり手が加えられている。American Ultraシリーズに用いられているプリアンプも搭載し、5弦ベースということもありレンジや音域も広い。これを手に中盤で演奏されたのが、“さらに広いステージへ行く”という意思が込められた「乱痴気」。イントロから始まるスラップ奏法が印象的で、ドラムやシンセ、ギターなど他の楽器が重なっても、骨太でレンジの広い音は鮮明に抜けてくる。高木のテクニカルな演奏にも、しっかり追随する反応の良さも感じられた。


サトウがブラックのAmerican Vintage II 1975 Telecaster Deluxeに持ち替えて演奏されたのが「寿限無」。クランチトーンにワウの組み合わせが印象的な音色で、アーバンな雰囲気を生み出していく。高木はここでサプライズのスペシャルな演出に入るが、あえてここでは伏せておこう。会場の一体感は最高潮に達し、その流れのまま「T・P・P feat. Pecori」へと雪崩込む。ここで客席に登場したのが、ラッパーのPecori(ODD Foot Works)。Presicion Bassで奏でられる図太いリフと、“タオパイパイ”のフレーズが耳に残り、広く見えたホールも狭いライヴハウスに充満するような濃い熱気に包まれていた。


長年、サトウがメインとして使っているステッカーが貼られたFender Custom Shop Jazzmaster Journeyman Relicも、もちろん今回のステージで使われ、ファズを踏んだサウンドやフローティングトレモロ&ブリッジを巧みに使ったビブラートなど、幅広い音色と演奏で活躍。特に「MUSICA」では、カッティングからスケール感の大きなギターソロまで巧みに弾き分け、Jazzmasterのポテンシャルを最大限に引き出していた。また同曲は、高木がPrecision Bassで奏でるイントロのベースのメロディも印象的で美しい。

ついにメジャーデビューを果たしたBREIMENのライヴパフォーマンスは、さらにスケールアップ。この日は6月28日にKT Zepp Yokohamaで行われる追加公演も発表され、より大きな会場で単独ライヴが行われるようになっていく。ただ、会場が大きくなっても、自由な音楽性と独創的なパフォーマンスは変わらず、今後もどんな場所でも楽しいダンスフロアに変容させてくれるはずだ。

All photo by Goku Noguchi

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