BREIMEN COME BACK TO BREIMEN JAPAN TOUR 2023
10月1日にメジャー移籍を発表した5人組オルタナファンクバンド、BREIMENが10月13日、全国8都市を廻るワンマンツアー〈COME BACK TO BREIMEN JAPAN TOUR 2023〉をスタートさせた。さらなる飛躍が期待される中、今回開催するツアーは、この5年間の集大成と言えるものになるに違いない。ツアーの初日となった渋谷Spotify O-East公演を、髙木祥太(Vo,Ba)とサトウカツシロ(Gt)の使用機材に注目しながらレポートする。
音色の存在感を耳に残していくJazzmaster
「俺たちは楽しければOK!」
この日、曲間のMCで髙木祥太(Vo,Ba)は言った。
10月1日、米国カリフォルニア州オレンジ郡にあるロサンゼルス・エンゼルスの本拠地、エンゼル・スタジアム・オブ・アナハイムでメジャー移籍を正式発表したことからして、なぜ、わざわざアメリカで!?と突っ込むべきなのだと思うが、帰国後、彼らが10月13日からスタートさせたワンマンツアーを凱旋ではなく、来日公演と呼んでツアータイトルを〈COME BACK TO BREIMEN TOUR 2023〉から〈COME BACK TO BREIMEN JAPAN TOUR 2023〉に変更してしまう悪ノリは、“俺たちは楽しければOK!”と語るBREIMENのまさに面目躍如。
そんな悪ノリや楽観主義が場合によっては、不遜、あるいは人を食ったような態度に見えることもあるかもしれない。しかし、現在のラインナップが揃ったことを機に無礼メンからBREIMENに改名した彼らがライヴハウスシーンでめきめきと頭角を現してきたのは、ブラックミュージックをバックボーンに持つスタイリッシュかつハイセンスな音楽性のみならず、型にハマらないプログレッシヴなバンドサウンドと“楽しければOK!”と言いながら、傍若無人なまでにとことん楽しむアティチュードが歓迎されたことが大きかったからじゃないのか。
そんな悪ノリ、いや、観客も巻き込みながらとことん楽しもうというBREIMENのエンタメ精神は、この日のライヴでもオープニングから存分に発揮されていた。満員のライヴハウスを映画館に見立て、メンバーたちがロサンゼルスの街をアメ車のオープンカーでドライブするムービーを映し出しながら、実際、オープンカーでステージに乗りつけ、スクリーンから飛び出してきたように見せるスペクタクルな演出で、いきなり観客の度肝を抜いてからライヴはスタートした。
“踊れるか!? O-EAST!”と高木が声を上げ、ファンキーなサウンドで序盤からスタンディングのフロアを揺らしていったステージの5人が5th Anniversaryと謳いながら、この日、演奏したのは、現在のラインナップが揃ってから、この5年の間に発表してきた新旧のレパートリーの数々だ。
「ジャパン! ニホンノミナサン、コンバンハ!」(高木)
Deluxe Jazz Bass V Kazuki Arai Editionのフルカスタマイズ機
アーバンな魅力もある「ODORANAI」で高木がメイン機の66年製Precision Bassから持ち替えたのは、新たに使い始めたDeluxe Jazz Bass® V Kazuki Arai Edition(以下:Kazuki Arai Jazz Bass)のフルカスタマイズ機だ。そのJazz Bassは、メイン機のPrecision Bassと揃えるようにボディの色をCandy Apple Redにリフィニッシュした上で、フロントにプレベのピックアップを載せてPJ化している。プレベとジャズべのピックアップをミックスしつつ、American Ultraシリーズに搭載されているプリアンプで持ち上げられた音像はさらにレンジが広くなった印象で、ミッドとローが厚いPrecision Bassのファットな音色とは明らかに違うものだ。見た目はそっくりなのに、音のキャラクターは全く違うところが面白い。
Fender Custom Shop Jazzmaster Journeyman Relic
一方、サトウカツシロ(Gt)が手にしている黒いマッチングヘッドとその黒が剥がれた部分から除くピンクペイズリーが印象的なメイン機、Fender Custom ShopのJazzmaster Journeyman Relic(以下:Jazzmaster)はクリーンに近い軽やかなカッティングから歪ませたコードストローク、アーミングで揺らすトレモロサウンド、ワウを踏んだファンキーなカッティングまでと、1曲の中で使い分けるさまざまな音色に対応するオールマイティなスグレモノという印象。パッドも使うSo Kannoのドラム、いけだゆうたのピアノ/キーボード/シンセ、ジョージ林のサックス/フルート/シンベ/サンプラーに加え、かなり音数が多いBREIMENのアンサンブルの中で、カッティングやサトウが多用するアーミングのオブリがしっかりと聴こえてくるのだから、メイン機としてサトウはかなり信頼しているのでは。
サトウが高木の歌と掛け合うようにラップする「A・T・M」でも、サトウのJazzmasterは絶妙に歪ませたカッティングをしっかりと立ち上がらせ、音色の存在感を耳に残していく。
現在、BREIMENは絶賛ツアー中なので、いわゆるネタバレを避けるため、具体的な曲名の記載はできるだけ控えさせていただくが、観客を踊らせるファンクサウンドを軸にアーバンな楽曲だけにとどまらず、ヘヴィなギターが鳴るミクスチャーロック、フリーキーなイプロビゼーションを含むプログレサイケ的な展開、そしてバラードとさまざまな楽曲を織り混ぜ、ステージの5人はバンドが持つポテンシャルを存分にアピールする。
American Vintage II 1975 Telecaster Deluxe
打ち込みのビートと、それに応える観客の手拍子でつなげながら、“一番盛り上がる曲行くけど、踊れますか!?”(高木)となだれ込んだニューウェーブ調のファンクナンバー「T・P・P feat.pecori」は音源同様、ラッパーのPecori(踊Foot Works)をゲストに迎え、観客のシンガロングとともにハイライトという言葉が相応しい盛り上がりを作り上げる。カッティングとコードリフを使い分けながら、Precision Bassで重低音を響かせる高木とともにグルーヴを担うサトウが持ち替えたAmerican Vintage II 1975 Telecaster Deluxe(以下:Telecaster Deluxe)で鳴らす軽い歪みが耳に心地いいのは、歪みの乗りがいい証拠。
ボディもピックガードも黒というところがクールなTelecaster Deluxeを、サトウが指弾きしながら、弦のハジける音を響かせ、演奏が始まったアーバンなバラードの「yonaki」。Kazuki Arai Jazz Bassのクリアな音色は高木がサステインをほどよく抑えながら織り混ぜたメロディアスなフレーズをくっきりと浮かび上がらせた。再びPrecision Bassに持ち替え、続く「MUSICA」のベースソロではグリッサンドを交えたフレーズでダイナミックさを際立たせながら、ヴィンテージ特有の豊かな低音を響かせていた。そんなアクティブとパッシブの良さを見事に使い分けている点も興味深い。
リズムが跳ねるポップソングの「MUSICA」では、サトウもJazzmasterを使ってトレブリーな音色でクイーンを思わせるドラマチックかつダイナミックなソロを披露。高木のベースソロとともに演奏を白熱させると、ライヴハウスをダンスフロアに変えた終盤の盛り上がりを大団円につなげていった。
終演後には来年2024年4月3日にメジャー1stアルバムをリリースすることが発表され、5周年記念の集大成ライヴは、BREIMENが新たな一歩を踏み出す記念すべきマイルストーンとなったのだった。
All photos by Goku Noguchi
※一部写真は大阪公演のものを使用
BREIMEN ONEMAN TOUR 2023 「COME BACK TO BREIMEN」
全国8都市ワンマンツアー開催中
10月13日(金) 東京Spotify O-EAST
10月20日(金) 大阪BIGCAT
10月28日(土) 広島Reed
10月29日(日) 福岡CB
11月05日(日) 金沢AZ
11月06日(月) 名古屋ElectricLadyLand
11月21日(火) 仙台MACANA
11月23日(木) 札幌Sound lab mole
チケット詳細はこちら
BREIMEN:https://www.brei.men/