Cover Artist | クリープハイプ -後編-

作品をお客さんの前で演奏するのがゴールだと思っています

CreepHyp

唯一無二の歌と楽曲で、日本のロックシーンを牽引するバンド“クリープハイプ”から、小川幸慈(Gt)と長谷川カオナシ(Ba)がCover Artistに登場。インタビュー後編では、楽器を始めたきっかけ、そしてフェンダーギター/ベースとの関係について語ってくれた。

クリープハイプはいろいろな 景色を見せてくれる
 

― ギターとベースを始めたきっかけは?

小川幸慈(以下:小川) 高校生の時に、文化祭に出ようとして友達とバンドを結成したのがきっかけですね。5人編成のバンドだったんですけど、俺は後から誘われたんです。ドラムとベースとギターはすでにいたので、“ギターやってよ”と言われて“あ、やるやる”という感じでしたね。

― どんなバンドだったんですか?

小川 最初のバンドは他のメンバーが同じ中学校出身で、X JAPANがすごく好きだったんです。ただ、X JAPANはさすがに最初からは難しすぎるので、LUNA SEAをコピーするところから始めました。あとは僕らの世代だと青春パンク、GOING STEADYをやったり、Hi-STANDARDやBRAHMANをコピーしていましたね。

― カオナシさんは?

長谷川カオナシ(以下:カオナシ) 僕も高校でバンドがやりたいなと漠然と思ったんです。家に父親の持っていたエレキベースがあったのでベースを選びました。

― 当時、意識していたバンドは?

カオナシ ベースを持ち始めた頃、いろんな先輩から“ベースだったらこういうバンドがカッコいい”と洋楽バンドを教えてもらったのですが、あまり好きになれなくて。世代的には青春パンクの最後のほうだったので、そういうバンドやメロコアを弾いたりしていました。その後、自分たちで曲を作り始めるようになると、佐久間正英先生とか根岸孝旨先生が好きになりました。

― お2人はサポートメンバー時代を経てクリープハイプの正式メンバーになったわけですが、いつからプロ志望だったんですか?

小川 高校時代からバンドを始めて、高校卒業の時にはバンドで食ってこうという気持ちでした。ただ、そこから先はけっこう長かったです(笑)。クリープハイプでメジャーデビューする時もまだバイトをしていたので…。18歳からなので、なかなか長い下積み時代でしたね。

― それでもミュージシャンとしての道を諦めなかった理由は?

小川 バンドが好きだったんですよね。そして、バンドでギターを弾いていたかった。ライヴハウスに出ていると、先輩のバンドに20代後半や30代前半の人もいっぱいいたので。まだまだチャンスはあると思ってずっと続けると、途中からもう辞められなくなってくるんですよ(笑)。

カオナシ 僕は、音楽で収入を得ることがどういうことなのかあまりわかっていなくて。クリープハイプはどんどんいろいろな景色を見せてくれるし、いろんなステージに立たせてくれるし、メジャーデビューもしたんですけど、音楽で対価を得るということが自分の中でクリアになっていなくて。だから、けっこうバイトを続けていました。メジャーデビューして約2年はバイトを続けていました。そういう意味では、ミュージシャンの道に踏み切るのは遅かったですね。


弾きたいフレーズを膨らませるパターンをイメージすることが重要
 

― お2人ともフェンダーユーザーですが、フェンダーに行き着いた経緯を教えてください。

小川 最初は、雑誌の後ろに載っていた初心者用のセットを買ったんです。でも、スタジオで弾いていて“何か違うんだよな”と気づいたんです。ビギナーなので詳しいことはわからないんですげど、俺が聴いてきた音でないことは確かだと思ったんです。それで、自分の中でギターとしてイメージに出てきたのが、フェンダーのサンバーストのStratocaster。それを御茶ノ水に買いに行ったのが最初のフェンダーです。

― 小川さんと言えばJazzmasterですが、Jazzmasterとの出会いは?

小川 もともとは、尾崎が初めて買ったギターがJazzmasterなんです。クリープハイプをサポートするようになって、そのとき僕はFender USAのAmerican Vintage 62のStratocaster Thinlineを使っていたんです。でも尾崎が“この曲にはストラトの音じゃないなぁ”となって、“ちょっとJazzmasterを使ってみてほしい”と言われて使い始めたんです。そしたらジャッキっとした音色がバンドに合って、“できればJazzmasterを弾いてほしい”と言われたのが始まりですね。

― そんなJazzmaster使いの小川さんが今日持ってきたのが…。

小川 AMERICAN ACOUSTASONIC TELECASTERです。しかも塗っちゃいました(笑)。

― カッコイイです! 発売されたばかりで、カスタムしているのはジャック・ホワイトくらいしか知らなかったので感激です。そもそもなぜアコスタソニックを?

小川 アコギメインで録った曲をライヴで演奏する時、普通のアコギを持って弾くのかなと思っていたら尾崎から“アコギじゃないのにしてほしい”と言われて。アコギの曲なのに?と思って、どうしようかなと考え出したのがきっかけです。見た目的にはTelecasterなんですけど、ナチュラルな感じがするなと思って。それで、塗りました。

― 弾き心地はいかがですか?

小川 弾きやすいですね。あと、エレキから持ち替えた時、アコギだといろいろなストレスがあるのですが、それが一切ないんですよね。

― カオナシさんがフェンダーに辿り着いた経緯は?

カオナシ 最初は小川さんと同じで、ビギナーズものを買ったんです。それからメロコア、パンクを弾くようになって、別のメーカーのベースを買いました。そのあと、クリープハイプのサポートをする中で、出したい音よりもベースが暴れすぎるなと思って、American StandardのJazz Bassを持ち始めたのが最初です。今でもそのジャズベは、レコーディングで繊細な表現をしたい時に使っています。

― 今日持ってきているのはPrecision Bassですよね?

カオナシ はい。5年くらいずっとメインで使っているピノ・パラディーノモデルのPino Palladino Signature Precision Bassです。ライヴもレコーディングも基本的にはこれがメインです。

― このプレベに行き着いた経緯は?

カオナシ ジャズベよりも守備範囲が広いというか、下の部分をカバーしてくれるものが欲しくてプレベをいろいろと試奏していたんです。その中で、低いポジションから高いポジションまでのブレが少なかったのと、取り回しがすごく良かったのでこのモデルを選びました。

― クリープハイプがきっかけで楽器を始めるキッズも多いと思うので、ビギナーがコピーするのにおすすめの楽曲を挙げるとすると?

小川 「寝癖」ですかね。Aメロで音を伸ばしたあとにアームで音を揺らしたり、サビでもカッティングでチャカチャカ弾いていたりと、Jazzmasterのいい部分が入っています。あと、いろいろな奏法が出てくるので弾いていて楽しいと思います。

カオナシ 若い人に、楽器を始めるのは簡単だと思ってほしいんです。基本的にはすごく簡単で、でも余白があって、遊びの部分があるのが「禁煙」という曲ですね。速いビートの曲ですが、ストリングスが入っていたりと、ベースの“遊びしろ”がいっぱいあるんです。実際にいろいろな遊びをしているんですよ。例えば、左手が縦横無尽に走り回るフレーズもあって、そこは弾いていて楽しいので、若いベーシストの方に挑戦してみてほしいですね。

― お2人のプレイヤーとしての野望は?

小川 10年近く活動してきた中で、俺のギターのイメージが何となく付いてきていると思うんです。そこも維持しつつ更新はしていきたいです。“また何か面白いことしている”“ギターってカッコいいな”というのを更新していきたいですね。

― ギタリストとしてシグネチャーサウンドを持つにはどうしたらいいでしょうか?

小川 自分が弾きたいバンドのこの曲で、弾きたいフレーズを膨らませる、いろいろなパターンをイメージすることが重要だと思います。例えば、あるフレーズを練習するよりは、今まで聴いてきた音楽や、自分の中で自然と出てくるものが重要だと思っています。それを色付けするために、しっかり演奏するために、さまざまな練習があると思うんです。だから、最初はイメージを膨らませていくことが重要ですね。

カオナシ すごく釈然としますね。小川さんはレコーディングの時、本当に面白いフレーズを持ってくるんですけれど、面白すぎて弾くのが難しいフレーズも多いんですよ。ということは、イメージの力がすごく強くて、手グセで考えていないってことなんです。いろいろな音楽を聴いて、いろいろな発想がある。それに近づけるために練習をする、という順番なのでしょうね。

― カオナシさんのベーシストとしての野望は?

カオナシ 当たり前のように存在していたいですね。“長谷川がほしい”とかじゃなくて、“そう言えばいるよね”くらいの感じでいたいです。メンバーやお客さんが一番ストレスのない状態で演奏できる、演奏を聴くことができる存在でいたいです。

小川 ここでパートの差が自然と出ましたね(笑)。

― 家で過ごす時間が増え、楽器を始める人が増えていると聞いています。楽器を始めようとしている人にメッセージをお願いします。

小川 今は楽器を始めるのにすごくいい時代だと思っていて。昔はタブ譜とか文章を読むことでしか始める手段がなかったのですが、今はYouTubeをはじめいろいろな動画があって、こういう弾き方をしている、こういう押さえ方をしているなど簡単に学ぶことができる。楽器を始める人にとってはすごくいい環境なので、ぜひ始めてほしいですね。

カオナシ 少しでも楽器に興味を持った方には、どんどん始めてほしいです。楽器屋さんに行って楽器を買う経験を大事にしてほしいと思っています。それと、今は音楽を発表する場がライヴハウス以外にもあるいい時代だと思うので、楽器を弾くコミュニケーションの楽しさをどんどん味わってほしいですね。


› インタビュー前編はこちら

 
CreepHyp

クリープハイプ 愛用機材

小川(左):AMERICAN ACOUSTASONIC™ TELECASTER®
カオナシ(右):PINO PALLADINO SIGNATURE PRECISION BASS®

PROFILE


クリープハイプ
2001年、結成。2009年に現メンバーで活動を開始。メンバーは尾崎世界観(Vo,Gt)、長谷川カオナシ(Ba)、小川幸慈(Gt)、小泉拓(Dr)。2012年4月、1stアルバム『死ぬまで一生愛されてると思ってたよ』でメジャーデビュー。2014年、2018年には日本武道館公演を開催。2019年11月に現メンバーでの活動10周年を迎える。尾崎は『祐介』『苦汁100%』『苦汁200%』の刊行など執筆活動でも注目を集める。

› Website:https://www.creephyp.com/

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