Cover Artist | SE SO NEON -前編-

特定のアーティストが持つエネルギーや曲がくれるフィーリングに反応している

先日ヴォーカルギターのソユンがBTSのRMとのコラボ曲を発表するなど、韓国で今最も熱いロックバンド、SE SO NEONがついにCover Artistに登場。インタビュー前編では、二人の音楽や楽器との出会い、お互いのプレイヤーとしての印象、さらにAmerican Vintage IIを始めとした様々なフェンダー楽器を弾いてみてのインプレッションも語ってもらった。

楽器を弾くのがとても楽しかった。一番長くやったサムルノリはギターを弾くのと似ている

──お二人の音楽との出会いはいつ、どういうものでしたか?

ファン・ソユン/Hwang Soyoon(Vo,Gt/以下:ソユン) 初めて音楽に接したのは、両親が家で流してくれていた音楽でした。主に韓国の昔の音楽や映画のサウンドトラックだったと思うんですけど、初めて”音楽っていいな”と思いました。その後、小学校からギターを始めて、そこから楽器に興味を持つようになりました。

パク・ヒョンジン/Park Hyunjin(Ba/以下:ヒョンジン) 僕は音楽をとても良いと感じて始めたわけではありませんでした。ドラムを習っていたんですけど、間違えるのがすごく怖かったんです。でも、その時僕の隣で鳴っていたのがベースで、スラップの弾き方がなんだか新しいと感じたところからベースに魅力を感じるようになって自分でも弾くようになりました。

──ヒョンジンさんはどんな音楽を聴いていたんですか?

ヒョンジン 最初に聴き始めたのは、グリーン・デイとか、サム・フォーティーワン、ミスター・ビッグなどで、それ以降はいろんな音楽を聴くようになりました。

──想像していたのと全然違います! ソユンさんは音楽に関してかなり雑食だそうですが、なぜそうなったんでしょう。

ソユン ジャンルで音楽を分けなかったからだと思います。私は、昔のブルースから今のエクスペリメンタルやエレクトリックミュージックまで、特定のアーティストが持っているエネルギーとか曲がくれるフィーリングに反応しているんだと思います。それを追って音楽を聴いていたからスペクトラムが多様になったんだと思いますし、今もそうなんだと思います。

──ソユンさんは小学校4年生のときに20万ウォン(約2万円程度)のエレキギターを買ったそうですね。どんなギターでしたか。

ソユン ちょっと恥ずかしいのですが、他社ブランドの赤いギターでした。でも、初ギターを買ったのはその前で、近所の楽器店で売っていたブランドの分からないクラシックギターでした。

──ギター以外にどんな楽器をこれまで弾いてこられましたか?

ソユン ピアノはかなり長く弾いていたんですが、一つも記憶に残っていません(笑)。短期間で習ったものはたくさんあります。ドラムも少し習っていましたし、トランペットもやりましたし、笛の類も。

──なんでそんなに色々な楽器を?

ソユン 楽器を弾くのがとても楽しかったからです。実は一番長くやったのは韓国の伝統楽器のサムルノリ(※)というものなんですけど、ギターを弾くのと似ているんですよ。

──そうなんですね。ソユンさんは中学3年生のころから作詞作曲をされているそうですが、どんなきっかけがあったのか教えてください。

ソユン 当時、ブルースギターにすごくハマっていて、それとは別にMIDIを習っていたんですけど、先生に勧められて学校のプロジェクトで作曲することになったんです。当時は照れもあって、自分が作曲したものを誰かに聴かせたり世間に積極的に公開するのに臆病になっていたんですけど、これがきっかけになってブルース以外でも様々な音楽を一人でつくって遊ぶようになりました。

──その時の曲はまだあるんですか。

ソユン 中3の時の曲はYouTubeにもあります(笑)。

──そうなんですね! あとで探してみます。ヒョンジンさんは先ほど挙げたほかにどんな音楽を通ってきているんですか。

ヒョンジン 先ほどお話ししたアーティストを聴いたあと、カーク・フランクリンなどのブラックゴスペルも聴くようになりました。あと、大学ではロバート・グラスパーを聴くようになったのをきっかけにベーシストのデリック・ホッジを聴くようになったし、ピノ・パラディーノも聴いてました。セソニョンに加入してからはソユンが勧めてくれる音楽を聴くようになって、今更ですが最近はレディオヘッドが刺さってます。もともとは「Creep」しか知らなかったんですけど、最近はアルバムを一枚一枚聴きながら、”これはなんだか新しい領域だ”とハマっていますね。

American Vintage IIは”お前たちヴィンテージが欲しいのか?じゃ作ってやるよ”みたいな主張を感じる

──お互いをどんなプレイヤーだと思っていますか。

ソユン うーん、考えたことがない。

ヒョンジン 考えたことないの(笑)?

ソユン 言語化したことがないけど、感じていることはある。

ヒョンジン 僕はソユンのギターを4年間見ていますが、最近感じているのは、ソユンは自分自身を最もギターに溶け込ませて、自分自身をそのまま表現することができる人だなって。ソユンはギタリストというよりもアーティストという感じがします。ギターという枠だけでは語れないですね。

ソユン ヒョンジンは吸収するのがすごく上手な人だと思います。ある環境に置かれた時、ある音楽を聴いた時、それを自分のものにできるオープンマインドな人。プレイヤーとしてのスキルはあるし、キャラクターもある。さらに、ベースという楽器が持つ美学を一番よく理解しようとしているし、その美しさを知って動けるプレイヤーだと思っています。

ヒョンジン 最高のベーシストだって言っておけばいいと思うよ(笑)。

ソユン (笑)。ただ、そうなるにはベースを上手く弾くことに集中してはいけないと思います。いま私が話したようなことができるのは、すでに実力を備えている人。なので、他のベーシストも上手く弾くという次元を超えて、ベースそのものになったらいいなと思います。

──これまでどういう練習をしてきましたか。

ヒョンジン 僕は、”練習しなきゃ”と思って練習したのは7年前、21歳の時が最後でしたね。その時まではなんだか不安で常に練習していたんですけど、ある時から”テクニック的なことは全部やったんだから、もっとベースらしさを習得しなければ”と思って、いい音楽を聴いて、自分には表現できないニュアンスを表現しようと練習しましたね。いい音楽を聴いて、真似して弾く。

──ソユンさんは?

ソユン ギターを始めた当初は一生懸命練習しました。朝、地下室に入って練習して、夜になってから出てくるって感じで。ただ、それは高校生の時が最後だったと思います。当時は負けん気が強かったので、”これができないとダメだ”ってすごく強く思っていました。(小声で)今はそういう気持ちはまったくないです。

──ギター教室か何かに通っていたんですか?

ソユン はい、一時的に中学を辞めて音楽学校に通っていました。もともと、早く大学に入学しようと入試の準備をしていたんですけど、先生が”入試はやめなさい。あなたはあなたの音楽をやりなさい”とおっしゃったので、”分かりました~”って今こんな風に自分の音楽をやっています。

ヒョンジン 今思うと、素晴らしい先生だったんだね。

──では先ほどフェンダーの楽器を弾いてらっしゃいましたけど、まずはAcoustasonic®︎を弾いてみての感想をお聞かせください。

ソユン 私はヴィンテージが好きで、正直現代に作られたハイブリットが加味されたAcoustasonicのような楽器に対する不信感が少しあったので、あまり期待せずに弾いてみたのですけど、“発明品”のような感じで音がよかった。今後、絶対に自分のお金で購入するんじゃないかと思います。それくらい魅力的な楽器でした。

──そんなによかったですか。

ソユン アコースティックギターはコントロールが難しい楽器なので、電子化しても音はそのまま再現されないと思っていたんですけど、普段私はエレキとアコギを一緒に使うことがないのでその点は置いておくとしても、アコースティックギターの音を出すということに関してはとても自然な音で感動的でした。

ヒョンジン 僕はAmerican Vintage II 1954 Precision Bass®︎American Vintage II 1966 Jazz Bass®︎を弾いてみたんですけど、プレシジョンベースはとてもよく作られていると思いました。もともとAmerican Vintageの以前のシリーズは60sや70sなどの年代ごとのモデルで、よく再現されている部分と最近いいと思われている部分を混ぜている印象が強かったのですが、今回のAmerican Vintage IIシリーズは、”お前たちそんなにヴィンテージが欲しいのか?じゃ作ってやるよ”みたいな主張を感じます(笑)。当然音もいいですし、現行品で買える手頃なラインでありながらもカスタムショップにかなり近い感じがします。

──Player Plus Active Meteora®︎ Bassはいかがですか。

ヒョンジン 最近出たモノネオンのシグネイチャーモデルみたいにシングルコイルピックアップが二つ付いていてハムバッカーになっているから、ある程度ミュージックマン(レオ・フェンダーによってフェンダーに次いで1972年に創業された会社)のような質感が出るかなと想像したのですが少し違いますね。アクティブのときの出力はびっくりするほど素晴らしいと思いました。ボディシェイプが独特なのでマニアックな方にとってはすごくいいのでは、と思います。

──ソユンさんはAmerican Vintage IIは弾きましたか?

ソユン はい。全部とてもよく作られているので選ぶのが大変です。でも、私ならAmerican Vintage II 1966 Jazzmaster®︎を選ぶかな。私は普段Stratocaster®️を使っているのでAmerican Vintage II 1957 Stratocasterの音がとても気に入っているんですけど、前からJazzmasterが欲しいと思っていたんです。でも、色が違えばストラトにしたかもしれないですね。

──やっぱり、見た目も重要ですか。

ソユン ギターを演奏する上では見た目がすべてなので(笑)。

※サムルノリ:朝鮮の伝統楽器であるケンガリ・ チン・チャング・プクを用いた韓国の現代音楽。プンムルノリと呼ばれる農村地帯の伝統的な農楽をもとに、1970年代末に舞台芸術としてアレンジされたパーカッション・アンサンブルである。

ヒョンジン:American Vintage II 1954 Precision Bass | ソユン:American Vintage II 1966 Jazzmaster

>> 後編に続く(近日公開)


SE SO NEON(セソニョン)
ファン・ソユン(Vo,Gt)、パク・ヒョンジン(Ba)からなる韓国のバンド。 2016年に韓国ソウルで結成、2017年6月にシングル『長い夢』でデビュー。同年10月EP『夏の羽』で、韓国インディーズを代表する1組となる。 韓国大衆音楽賞「今年の新人」「最優秀ロック歌」を受賞し、日本をはじめ、米国、カナダ、ドイツ、台湾など10カ国余りでライブを行っている。 2020年には〈Fender NEXT〉への選出をはじめ、米国の音楽メディア「ピッチフォーク」や「ペースト」のベスト・ロック・アルバムの1枚に選ばれ、2021年にはYouTube Musicの「2021Foundry」で唯一の韓国チームとして選ばれるなど、継続的に海外から高い評価を受けている。
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