Cover Artist | J -前編-
フェンダーというブランドの哲学が、僕の哲学ともマッチしたんです
(Photograph by Maciej Kucia)
今年結成30年を迎え、今なお日本のロック界を牽引するばかりか、世界中にファンを持つスーパーバンドLUNA SEAのベーシストでもあり、ソロ活動も20年以上のキャリアを持つJ。そんなJの唯一無二のベースサウンド、プレイスタイルは後進のベーシストに多大な影響を与えてきた。LUNA SEA結成30周年という節目にフェンダーとエンドース契約を結び、プレイヤーとして常にチャレンジを続ける J がCOVER ARTISTに登場。前編では、エンドース契約に至る経緯を聞いた。
― まずはフェンダーとのエンドース契約に至った経緯から教えてください。
J 10代の頃から音楽をやってきて、ベーシストとしていろんな経験をさせてもらいましたし、これまでずっと自分自身のサウンドを追求して突っ走ってきたんですけど、より理想のサウンドを追いかけてみたくなったんです。自分自身が鳴らす音は、ある意味どこにも属さない音でありたいと思い続けてきて。今年はLUNA SEAが結成30年、一昨年がソロ活動20年、そういう節目を迎える中で、ベーシストとして自分にしか鳴らせない音、自分だけのプレイスタイルをひとつ確立できたのかなと思ったのがここ数年だったんです。自身のプレイスタイルを確立できてベーシストとして嬉しかった一方、新しい刺激が欲しくなったのも事実で、その新しい刺激を探すこと、そこに向かう時が来たんだなとここ最近は感じていました。そうなった時に、自分が聴いてきた音楽の背景も含めて考えると、フェンダーの楽器がいつでも僕の音楽人生の中に存在していて、“自分自身が乗りこなしたいひとつのサウンド”だったことに改めて気が付いたんです。同時に、フェンダーという“伝統のある熱量”を組み込んで、自分なりのサウンドをまた作っていく挑戦がイメージできたんです。そういうロックロールの精神性の部分が、エンドース契約に至った大きな理由です。
― 今回、Jさんが使用するフェンダーのPrecision Bassは、ザ・クラッシュのポール・シムノン、セックス・ピストルズのシド・ヴィシャス、ラモーンズのディー・ディー・ラモーンといったパンクのレジェンドたちが使っていた、パンクやロックにとっては伝統とも言えるくらい揺るぎない存在のベースです。その伝統にJさんはすぐに身を委ねず、ベーシストとして確固たるスタイルを作り上げた今だからこそ、その伝統と対峙しようとしています。
J 自分自身の息吹をもってして、その伝統の中に乗り込んでいくというイメージです。フェンダーは、ベーシストだけを見てもさまざまな猛者たちがエントリーされているわけですが、その中に加わってフェンダーの音を乗りこなすというか、自分なりの音に変えていく醍醐味に今ワクワクしています。そういう状況をイメージするだけで、これはスゲェことになるなって気持ちになれたんですよね。ファンのみんなにも、僕が新しくフェンダーを使うその意味を感じてもらえると思っています。そして、これまでやってきたことへの自負があるからこそ、大きなうねりの中に飛び込んでも自分自身のサウンドを作り上げていくことができる。そのイメージが皆に伝わればいいなと思っています。
― これまで、フェンダーのベースに触れたことはありましたか?
J 個人的なコレクションの中で、フェンダーのベースは何本も持っているんです。ヴィンテージも持っていますし、マスタービルダーが作った最新のものも持っています。ルックスが好きで買ったものもありますし、ただ持っていたいという想いだけで手に入れたものもあります。不思議とフェンダーというブランドは、キッズの頃の自分に戻してくれる。その忘れちゃいけない熱量を今は無性に欲しているから、フェンダーベースを弾くのが楽しみなんです。
― フェンダーは初期衝動を思い出させてくれる存在だと。
J そうです。そして、なぜ多くの伝説的なベーシストがフェンダーのベースをプレイしてきたか、その答えや理由をひとつひとつ自分のものにしていける予感がします。
― プライベートで持っているフェンダーはすべてPrecision Bassですか?
J Jazz Bassも持っています。実は俺、Precision Bassの音が大嫌いだったんです。
― えっ!?
J 驚かせてしまいましたけど、いわゆる皆がイメージするPrecision Bassの音が苦手だったんです。でも、Jazz Bassを弾いていると、段々とPrecision Bassにも興味が沸いてくるんですよ。自分のコレクションの中に57年製のヴィンテージのPrecision Bassがあって、それに初めて触った時にもすごくいい音だと思ったけど、理想としているものとはちょっと違ったんです。その後にいわゆるOPB(オリジナル・プレシジョン・ベース)を弾いた時に、理想的な音に出会ったんです。Jazz Bassではなく、僕が勝手に思い込んでいたPrecision Bassでもないサウンドだったんですよ。それで好奇心が湧いて、フェンダーのベースという楽器をもっと研究するようになり、自分の好みのボディ材、ネック材がわかるようになりました。そういう風にベースをディグしているうちに、とうとう理想のベースに出会ったんです。それが、フェンダーのマスタービルダーによるカスタムシリーズのPrecision Bassでした。ヴィンテージではなくて、現役のマスタービルダーたちが作っているモデルを何度も弾かせてもらったら、ヴィンテージをも飛び越えてしまうサウンドを放つんです。“これってどういうこと?”と感じた時に、もしかしたら自分自身の求めるサウンドを、フェンダーとならとことん追求できるかもしれないと思って。フェンダーの楽器は“こうでなければいけない”というものではなかった。伝統の中でいろんなものをぶっ壊して、フェンダーというブランドは現代まで歩んできたんだなと感じたんです。
― キース・リチャーズがフェンダーのTelecasterを持つようになったのも、同じような理由だったと記憶しています。
J フェンダーのボスにも“自分の表現したいことを追求するべきだよね。それがロックンロールでしょ?”みたいなことを言われて、その言葉がフェンダーというブランドの哲学を映し出しているなと思ったし、それは僕の哲学ともピッタリとマッチしたんです。
― フェンダーの伝統に頼るのではなく、フェンダーと新しい音を作っていきたいんですね。
J フェンダーのマスタービルダーが作るカスタムシリーズは、過去を目指しているのではく、時代を前に進めている感じなんです。つまり、フェンダーは伝統あるブランドですが、フェンダーの楽器は伝統工芸ではない。だけど伝統があるが故のエネルギーを感じたし、僕が伝えようとしているサウンドを理解してくれるんじゃないかと思ったんですよね。
› 後編に続く
PROFILE
ジェイ
92年、LUNA SEAのベーシストとしてメジャーデビュー。97年、LUNA SEAの一時活動休止を機に、ソロ名義でバンド活動をスタートし、1stアルバム「PYROMANIA」を発表。その後、LUNA SEA 終幕を経て2001年にソロ活動を再開すると、海外から多数のアーティストを招き開催したライヴイベント「FIRE WIRE」、史上初、アリーナをオールスタンディングにして開催した日本武道館公演、数多くのゲストバンドを一同に迎えての5日間連続ライヴ「SHIBUYA-AX 5DAYS」等、独自のスタイルでライヴを展開。2017年にはソロデビュー20周年を迎え、ベストアルバム「J 20th Anniversary BEST ALBUM <1997-2017> W.U.M.F.」をリリース。現在は2010年に再始動したLUNA SEAとソロの両輪で活動中。
› Website:http://www.j-wumf.com
LIVE INFORMATION
J LIVE TOUR 2019 -THE BEGINNING-
7月6日(土)岡山IMAGE
7月7日(日)福岡DRUM Be-1
7月13日(土)金沢AZ
7月15日(月・祝)仙台Darwin
7月21日(日)札幌cube garden
7月27日(土)大阪BIG CAT
7月28日(日)名古屋CLUB QUATTRO
8月11日(日・祝)マイナビBLITZ赤坂
8月12日(月・振)マイナビBLITZ赤坂(ファンクラブ会員限定)
RELEASE INFORMATION
Limitless
【CD+スマプラ】¥3,240(tax in)
【CD+DVD/Blu-ray+スマプラ】¥8,640(tax in)
【SPECIAL SET -初回生産限定盤-】¥10,800(tax in)
エイベックスJ
2019/07/24 Release