Interview | 春畑道哉 -後編-
TUBEのギタリスト、春畑道哉のシグネイチャーモデルMichiya Haruhata StratocasterがこのたびMADE IN JAPANラインでリリースされることになった。本モデルはFENDER CUSTOM SHOPのマスタービルダー、ジェイソン・スミス製作のMichiya Haruhata III Stratocaster Trans Pinkを忠実に再現したもの。鮮やかなトランスピンクカラーに塗装された、フレイムメイプルトップのアッシュボディはノーピックガード仕様。HSH構成のピックアップも、まるで歌うような春畑のギターサウンドを支えるべく、オリジナルモデルと同様、ボディにダイレクトマウントしている。インタビュー前編では、コロナ禍を春畑はどう過ごしたのか、今夏にリリースされたTUBEの新作はどのような作品になったのかに迫ったが、後編ではいよいよそのMichiya Haruhata Stratocasterについて、本人の口から存分に語ってもらうとともに、先日訃報が伝えられたエドワード・ヴァン・ヘイレンに対する春畑の熱い思いについても詳しく聞いた。
― 今回のシグネイチャーモデル、Michiya Haruhata Stratocaster Maple Fingerboard Trans Pinkを作るまでの経緯を聞かせてください。
春畑道哉(以下:春畑) 2002年にフェンダーとエンドースメント契約を結び、そのシリーズ第3弾として2011年に限定生産のFENDER CUSTOM SHOP製のMichiya Haruhata Stratocaster IIIを作らせてもらいました。それはとても素晴らしいギターだったのですが、カスタムショップ製だと数十万円もしてしまうため、ギターを始めたばかりの若い子たちにはちょっとハードルが高すぎるかなと思っていたんです。若い子でも頑張ったら買えるくらいの価格で、ギターを作ってもらえないかなと思ってリクエストさせてもらったところ、とてもクオリティの高いシグネイチャーモデルMichiya Haruhata Stratocaster Caribbean Blue TransをMade in Japanのラインナップに入れてもらうことができて。それなら、こちらの赤いギターMichiya Haruhata III Stratocaster Trans Pinkもものすごく気に入っているので、また作ってもらえないかなぁと思っていたら願いが叶いました(笑)。
― シグネイチャーモデルを作る上で、特にこだわった部分は?
春畑 基本的に、カスタムショップの全スペックをできる限り再現しています。木材も表記上ではほぼ一緒。メイプル素材ですし、アッシュボディでフレイムトップを貼って、ボディに直付けのピックアップなどかなり忠実に再現していますね。ピックアップもテキサススペシャルとディマジオなので、カスタムショップとまったく同じです。
― もちろん、ラージヘッドはリバース。春畑さんのトレードマークのようなものですよね。サウンド面は?
春畑 僕のギタープレイには、歌を歌っているようなフレーズが多いんですよ。まるで人の声のように、太く朗々と歌ってほしいと思ってサステインを重視しました。アームもフローティング具合が絶妙なので、繊細なニュアンスが表現できます。
― 前回の青いシグネイチャーモデル、Michiya Haruhata Stratocaster Caribbean Blue Transとの違いは?
春畑 指板がMichiya Haruhata Stratocaster Caribbean Blue Transはローズウッドで、Michiya Haruhata Stratocaster Maple Fingerboard Trans Pinkはメイプルです。それからピックガードが付いているかどうかですね。サウンド面では、Blue Transはウォームで太く、Trans Pinkは明るくて切れ味も良い。ハードなリフを奏でたい時にはTrans Pinkを使うことが多いです。自分の曲で言うと、昨年12月に配信リリースした「Kingdom of Heaven」。Trans PinkをドロップDにして、キレ味のあるスピーディなリフを弾いています。
ちなみに、ボディに直付けのピックアップは、僕の大好きなエドワード・ヴァン・ヘイレンと同じ。ここ数日、ソロツアーに向けての練習をしていて、そこでヴァン・ヘイレンの「Eruption」も演奏しようかなと思っているんですけど、もうまんまエディのギターサウンドが作れますよ。音の立ち上がりや明るさなども、ローズ指板のBlue Transよりエディっぽいかも知れないです。 ただ、ハーフトーンのクリアサウンドなどは、こちらのほうがもっと多彩。ピックアップの組み合わせによって、春畑モデルならではの面白い組み合わせもできるはずです。
― それにしても、エディの訃報(10月6日)には驚かされましたね。
春畑 本当に。まだ65歳ですからね。ものすごくショックです。
― エディは、春畑さんにとってどんな存在だったのでしょうか。
春畑 誰もが言っているように、とんでもないギターの弾き方を発明した革命家ですよね。“なんじゃこりゃあ!”の世界ですよ(笑)。しかも、彼らの好きなところは明るくロックをやるところです。あんなに楽しく、明るくロックを奏でるバンドは、それまでそんなにいなかったんじゃないかな。ロックって、もっとしかめ面で演奏するものだと思い込んでいたけど、エドワード・ヴァン・ヘイレンは「Panama」も「Jump」もとにかく明るい。そういうところも大好きですね。
― しかも、あらゆるジャンルのミュージシャン、特にギタリストからリスペクトされている存在は稀有だと思います。
春畑 確かに。僕は中1でギターを始めたのですが、その時はエディのギターなんて速すぎてとてもコピーできなかったです(笑)。先輩でめちゃくちゃコピーしている人がいて、それを食い入るように見ていました。“一体どうなっているんだ?”って。
― エディのギタープレイで、特にお気に入りというと?
春畑 たくさんありすぎて1曲にはとても絞れないですね(笑)。その時代、その時代で好きです。エディのことをマニアックに好きな人は、大概デイヴィッド・リー・ロス時代を挙げますが、サミー・ヘイガー時代も僕は好きですね。特に楽曲がポップで。
― 話を戻しますが、このMichiya Haruhata Stratocaster Maple Fingerboard Trans Pinkをどんな人に弾いてほしいですか?
春畑 実は、どんなサウンドでも出せるんですよ。朗々とメロディを歌うのにも向いているし、クリアなカッティングでも威力を発揮する。エッジの効いたハードなリフにも切れ味があるし、そういう意味ではジャンルを問わずオールマイティに使ってもらいたいですね。
― これだけ長くウィズコロナの期間が続くと、気持ちも鬱々としてきますが、何か没頭できるものがあると違うのかなと思います。そういう意味では、ギターの練習って良さそうですね。
春畑 それはすごくいいと思います! 普段、忙しくてできなかったスケール練習や、お気に入りの楽曲のコピーとか、いい時間の使い方ですよね。自分のためにもなるし。何か目標を持って“この曲、何とかクリアしたいな”と思って使う時間は有意義だと思います。
― しかも、やればやるだけ上達するから達成感もありますよね。
春畑 本当にそうですね。時間を忘れるくらい、何かに没頭できるのは素晴らしいことだと思います。
― では最後に、これからギターを始める人にメッセージをお願いします。
春畑 もしギターにちょっとでも興味を持って“弾いてみたいな”と思っている人は、今すぐ始めてほしいです(笑)。ご自宅での時間を思いっきりギターの練習につぎ込むのでもいいし、こんなに楽しいものはないと思うんですよ。弾きながら歌うこともできるし、コピーしたりコードを覚えたり、いろいろな楽しみ方で、一生付き合える楽器なので、ぜひとも“めくるめくギターの世界”を楽しんでください!
› 前編はこちら
MICHIYA HARUHATA STRATOCASTER® TRANSPINK
TUBEのギタリストであり、ソロアーティストとしても幅広く活躍する、日本屈指のギタリストの一人である春畑道哉のこだわりを凝縮した日本製シグネイチャーモデル。
PROFILE
春畑道哉
85年、TUBEのギタリストとして「ベストセラー・サマー」でレコードデビュー。86年、3rdシングル「シーズン・イン・ザ・サン」の大ヒットでバンドとしての地位を確立。87年、TUBEと並行してソロ活動を始め、現在までにシングル3枚とアルバム12枚をリリース。92年、シングル「J’S THEME(Jのテーマ)」が日本初のプロサッカーリーグであるJリーグのオフィシャルテーマソングとなる。93年のJリーグオープニングセレモニーでは国立競技場の約6万人の観衆を前にライブを行った。2002年5月9日、フェンダーと正式にアーティストエンドース契約を締結。日本人のギタリストとしては初めてのシグネイチャーモデルを発売。これまで、Michiya Haruhata Stratocaster、Michiya Haruhata BWL Stratocaster、Michiya Haruhata III Stratocaster Masterbuilt by Jason Smithという3本のシグネイチャーモデルを発表している。2019年3月リリースの最新ソロアルバム「Continue」は第34回 日本ゴールドディスク大賞 “インストゥルメンタル・アルバム・オブ・ザ・イヤー“を受賞。新日本プロレス大会テーマ曲として書き下ろされた最新曲「Kingdom of the Heavens」は配信限定でリリース中。
› Website:http://www.sonymusic.co.jp/artist/MichiyaHaruhata
› Website:最新ソロアルバム「Continue」