Special Interview | 山内総一郎(フジファブリック) -後編-

“弾いているのが楽しい!”と感じられるギターにしたかった

フジファブリックのヴォーカル&ギターとして活躍する山内総一郎の新シグネイチャーギターが完成した。10月25日に発売された「Souichiro Yamauchi Stratocaster®︎ Custom」と数量限定モデル「Limited Souichiro Yamauchi Stratocaster®︎ Custom」は、山内のギターに対する深い愛情と情熱の結晶だ。最近の活動について語ってもらったインタビュー後編からも、彼がこのギターをとても気に入っている様子がありありと伝わってくる。


──Souichiro Yamauchi Stratocaster Customは、どのような使い方をしていくことになりそうですか?

山内総一郎(以下:山内) “こういうシーンで使う”というような限定をしないギターを作りたかったので、めっちゃいろいろなところで使うと思います。でも、このギターを持った時に呼ばれるフレーズ、サウンド、アンプのセッティングを強いて挙げるならば、スライドプレイをする曲や和音をかき鳴らすような曲なのかなと。今やっているツアー(フジファブリック〈プラネットコロコロTOUR 2023〉)では、このギターでソロを弾き倒していたりもします。

──Stratocaster、Telecasterとの使い分けに関しては、どのように考えていますか?

山内 レコーディングでの使い分けに関しては、もともと使っているTelecasterを基準としています。Telecasterよりも太い音を出したい時に弾いているのがこのギターです。今のところ単音のフレーズ、リフだったりをレコーディングで弾く時に選んでいます。ダイレクトスイッチも多用していますね。

──このギターを、どのようなユーザーにおすすめしたいですか?

山内 分け隔てなくいろいろな方々に弾いていただきたいと思って作ったので、あまり限定はしたくないのですが、シンガーソングライターだったりバリバリにソロを弾くギタリストだったり、皆さんにおすすめできるギターです。とてもシンプルで弾きやすいギターなので、ビギナーの皆さんにとっても良いギターだと思います。“ギターを昔やっていたけど、もう1回やってみようかな?”というような方々にも弾いていただきたいですね。StratocasterとTelecasterが一つになっているようで、それぞれと似て非なるところもあるのですが、両方の良いところが欲しいギタリストにはぜひ手に取っていただきたいです。

──ユニークさもありますが、基本的な部分はものすごくオーソドックスで真面目なギターだという印象がします。

山内 めちゃめちゃ真面目ですね。弾くフレーズが限定されないストレートなギターなので、幅広いタイプのプレイヤーに弾いていただきたいです。鳴りが良いので、弾いていて楽しくなるギターでもあると思います。僕自身もギターを弾くことがすごく好きなので、“弾いているのが楽しい!”と感じられるギターにしたかったんです。作りもしっかりしているので、手にしていただけたら一生ものになると思います。パッと見は尖っているように感じる人もいるかと思いますが、本当にスタンダードなギターを作ったつもりです。手にした人が、今後何かを生み出していくきっかけのギターになったら本当に嬉しいことですね。


──山内さんの最近の活動のお話もさせてください。フジファブリックの新曲「プラネタリア」を収録したシングルがリリースされましたね。

山内 はい。「プラネタリア」でもオリジナルモデルのギターを全編で使っています。

──爽やかで瑞々しい「プラネタリア」の音色は、このギターだったんですね。

山内 そうなんです。アニメ『新しい上司はど天然』のオープニングテーマなので、“新しさ”を出したいと思った時にこのギターがぴったりだったんです。1コーラスと目と2コーラス目のブリッジの部分が4小節あって、その左右で鳴っているアルペジオと単音ギターの浮遊感のあるフレーズは、まさにこのギターで弾いています。

──作詞もしていらっしゃいますね。

山内 はい。原作を読ませていただいて、すごく共感しました。上司が天然キャラで面白いというだけのストーリーではなく、人の優しさが多面的に描かれている作品なんです。この作品の主人公は前の会社でパワハラを受けて転職して、新しい会社で出会った上司がびっくりするほど天然だったんですけど、その出会いに救われていくんですよね。自分の気持ちが刷新されていく体験が出会いなのかなと。人生は出会いによって何かが新しく生まれ変わっていきますし、そこには希望があるんだと思います。僕もバンドメンバーや上京して知り合った人たちとの出会いによって、音楽を続けてこられました。

──ご自身の体験を『新しい上司はど天然』に重ねて描けた歌詞ということですね。

山内 はい。日々の生活の中ではネガティヴなこともありますけど、出会いによってそれもポジティヴに切り取っていけるんだと思います。そういうことを描きました。『新しい上司はど天然』の物語に導いてもらった歌詞ですね。

──楽器との出会いも一期一会ですし、素晴らしいギターとの出会いで世界が広がるような体験もしてきましたよね?

山内 まじでそうですよ。54年製のTelecasterなんて、まさにそうです。顔馴染みの楽器屋さんで“こんなギターが入ったんですよ”って渡されて持ったんですけど、抱える前に一旦返しました。“これはヤバイ…”と(笑)。

──(笑)。弾いたら絶対に買ってしまう予感があったんですね?

山内 はい。“これは絶対に良い音だ”と。その後、近くの喫茶店で“どうしよう? あれを買うにはあれを売ってお金を工面しないといけないな…”って考えました(笑)。今、メインで使っているFiesta RedのStratocasterもそうなんです。Stratocasterはずっと使っていたんですけど、デビューしたくらいのタイミングで出会ったのがあれでした。順風満帆だったわけではないフジファブリックの、これまでの道のりを共に歩んできたギターです。中野の楽器屋さんで出会ったあのギターとの出会いは、僕の人生にとって本当に大きかったですね。

──Souichiro Yamauchi Stratocaster Customも、手にした皆さんにとってのそういうギターになったら最高ですね。

山内 そうなったら本当に嬉しいですよ。このギターは白色ですが、“あなた色に染めてください”という想いも込めています。

──今後の活動に関しては、11月3日にソロで〈1FM802 HOLIDAY SPECIAL 和歌山マリーナシティ presents SEASIDE PLEASURE〉に出演しますね。

山内 はい。弾き語りでフジファブリックの曲も含めていろいろ歌います。和歌山は小さい頃からよく行っていて、好きな土地なんです。

──12月8日に開催される〈“EX シアター六本木 10th Anniversary”奥田民生×フジファブリック〉もすごいことになりそうです。

山内 これも楽しみです。間近で民生さんのスーパーバンドを見られるのが嬉しいです。僕、ファンですから。

──来年の動きに関しては、何か決まっていますか?

山内 フジファブリックは来年デビュー20周年なので、間もなく20周年モードに入っていきます。4月14日にLINE CUBE SHIBUYA、8月4日に東京ガーデンシアターでワンマンライヴをやることになりました。10周年で日本武道館、15周年は大阪城ホールでやったので、20周年も応援してくださる皆さんと一緒に良い景色を見たいです。あと、1月にリリースするアルバムを今まさに作っているところです。ギターが好きな皆さんにぜひ聴いてほしい曲がたくさん入るはずなので、これも楽しみにしていてください。新しく作ったこのギターもレコーディングでたくさん使うと思います。使いどころがもう頭の中でイメージできていますから、あとは録るだけという感じになっています。

>> 前編はこちら

Souichiro Yamauchi Stratocaster Custom


山内総一郎
81年、大阪府茨木市生まれ。15歳より音楽を始める。2004年、フジファブリックのギタリストとしてメジャーデビュー。現体制となってからヴォーカル&ギター、作詞作曲を手掛ける。2014年にはデビュー10周年を迎え、初の単独日本武道館公演を開催。2016年、フェンダー社とエンドースメント契約を締結、アンバサダーとして活動。2022年3月にはソロアルバム『歌者-utamono-』をリリース。
http://fujifabric.com

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