Players’ After School | Char -前編-
この秋、文化祭を控える高校生バンドを応援するため、綾小路 翔(氣志團)、ハマ・オカモト(OKAMOTO’S)、Charの3人のアーティストがサプライズで高校の軽音楽部を訪れ、特別講義を行うというスペシャルな企画「PLAYERS’AFTER SCHOOL」が行われた。最後は、日本屈指のギタリストChar。前編では、特別講義の模様をレポートする。
秋の学園祭・文化祭を控える高校生バンドを応援するため、アーティストたちが高校の軽音楽部を訪れ、特別講義を行うというスペシャルな企画「PLAYERS’ AFTER SCHOOL」。第3弾は日本を代表するギタリストであるCharさん。
Charさんが訪れたのは、東京ディズニーランドからほど近い、東海大学付属浦安高等学校。学業だけではなくスポーツにも力を入れている学校で、体育館、武道館、サッカー場、野球場などが敷地内に完備されている。だが、軽音楽部も負けてない。やる気と実力のあるバンドが切磋琢磨をしている。そんなやる気に満ちた部員たちが、この日、週末に迫った文化祭に向けての特別講義を受けるために、放課後の部室に集合。ただし、部員たちはCharさんが来ることは知らせていない。
特別講義のオープニングは、軽音楽部の顧問でもある島先生が部員たちに「学園際でのライヴでいいパフォーマンスをするため、お手本の映像をみんなで観ましょう」と話し、Charさんの2016年武道館での「Smoky」のライヴ映像を観るところからスタート。ビデオを観終わると島先生が「実は今日、Charさんが特別講義に来てくれています!」と告げ、サプライズでCharさんが登場。部員たちから大きな歓声と拍手が上がった。
そんな興奮の中、Charさんの特別講義がスタート…と思いきや、Charさんは緊張気味の部員たちの気分を和らげようと、傍らに置いてあるPlayer Series Stratocasterを手にし、ギターを鳴らし部員たちをまずはリラックスさせる。講義早々、Charさんのギターを生で聴けて部員たちは大喜び!
部員たちがリラックスすると、自らのギターヒストリーについて語り出すCharさん。両親とおばあちゃんが、本名の「尚人」を「ひちゃと」と呼び、それがさらに訛ってCharになったという名前の由来から、5歳年上の兄の影響というギターを始めたきっかけなど、Charさん独特のユーモラスな語り口とギターをつま弾きながらのトークで、部員たちが講義にどんどん引き込まれてゆくのがわかる。中学3年からスタジオミュージシャンとしてお金を稼いでいたというエピソードが飛び出したり、終始部員たちには驚きの連続。しかも、中学生時代のスタジオミュージシャンとしての収入が「サラリーマンだった親父の2倍は稼いでいた」という発言にはみんなからため息さえ漏れていた。やはり雲の上の存在のCharさん…と思っていると、話の途中に小学生の時に初めて作ったオリジナル曲「田口先生の唄」を披露したり、部員たちとの距離はどんどん縮まっていく。
部員たちとの距離が近づいたところで部員たちからの質問コーナーへ。「リズムを良くするには?」という質問に対し「『ドラムライン』という映画を観てほしい」と答えた。また、「ラモーンズに憧れているんですが、どうしたらああいう音が出せますか?」という質問に対しては「俺の場合、口に出せない音はギターに出せないと思ってる。つまり、自分にない音はギターには出せない。だから、素の自分の鍛えるためにアコギを弾いてみなさい」と答えてくれた。さらに「オリジナルなリフを作る秘訣を教えてください」といった突っ込んだ質問に対し、Charさんが弾いていたギターを質問者に渡し「何か弾いてみて」と実践講座へ。ギターを弾く部員の後ろから二人羽織の状態でギタークリニックを敢行。ブルーノートとペンタトニックの2つのスケールについて、手を取り超実践的に教えてくれたのだった。
そんな豪華なQ&Aタイムで講義前半が終了。講義後半には部員たちによる演奏があるので、休憩中に部員たちは演奏の準備に取り掛かる。Charさんを前に演奏するとわかり、準備にも気合いが入っている様子だ。
演奏準備が完了し、部員たちの「Charさーん!!!」という大きな呼び声で再びCharさんが登場。後半は軽音楽部を代表して“浦安爆走族”が演奏を披露。そして感想を述べるCharさん。「言うことはないよ!」と演奏を絶賛。それでも、せっかくだからと各プレイヤーにアドバイスを施すCharさん。バンドメンバーのみならず、部員全員がそのアドバイスに真剣に耳を傾けていた。
そして演奏パートに続き、先ほどまでCharさんが弾いていたPlayer Series Stratocasterが軽音楽部に贈呈されたのだ。狂喜の声を上げる部員たち。そのままギターとCharさんとみんなで記念撮影。講義が始まった時、緊張していたのが嘘のようにリラックスして、Charさんの周りに集まる部員たちを見ているとギターと音楽がどれだけすごいのかがわかる。
そして、今日の講義の総括をするCharさん。この日の講義で何度も「音“学”じゃなく、音“楽”ですから。演奏を楽しんでください」と口にしていたが、その言葉を再び部員たちに贈る。そして、2時間の講義を終え、Charさんが教室から退出する時、部員たちから自然と感謝の意を込めた割れんばかりの拍手が起きた。その拍手に手で応えるCharさんもとても嬉しそうだ。
Charさんが教室を出た後、部員たちに講義の感想を聞いた。ある部員は「Charさんが言っていた“音楽を楽しむ力は誰にでも備わっている”という言葉が心に残っています」と嬉しそうだ。また別の部員は「いつも練習に行くスタジオでCharさんのライヴ映像が流れているんです。そんなすごい人が来てくれるなんて夢のようです!」と、先ほどまでの講義が信じられない様子。
だが、講義は夢でも幻でもない。さっきまでCharさんが講義をした証拠にStratocasterが教室にある。その教室では部員たちが練習する準備を始めていた。時刻はすでに18時を回っていたが、部員たちは週末の文化祭に向けて練習がしたいのだという。しかもみんな最高の笑顔だ。
教室にあるStratocasterが、まるで魔法の杖のように思えた。
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Char
本名・竹中尚人(たけなか ひさと)。10代からバックギタリストのキャリアを重ね、76年にシングル「Navy Blue」でデビュー。ソロと平行してJohnny, Louis & Char、Phychedelix、BAHOなどのバンド活動も積極的に行い、2009年にインディペンデントレーベル「ZICCA RECORDS」を設立し、2017年にWebメディアOfficial ”Fun”club「ZICCA ICCA」を開設。ギターマガジン主催の「ニッポンの偉大なギタリスト100」でグランプリに選出されるなど、日本を代表するプレイヤーのひとり。
› Website: http://top.zicca.net/