
Cover Artist | DISH// -後編-
フェンダーは初心者にもプロにもイエスと言ってくれる
FenderNewsが毎月1組のアーティストにフォーカスする「Cover Artist」に、DISH//が4人揃って登場。インタビュー後編では、北村匠海(Vo,Gt)、矢部昌暉(Cho,Gt)、橘柊生(DJ,Key)、泉大智(Dr)が、それぞれにとってのフェンダーというブランドの魅力を語るとともに、100曲以上のデモから厳選して完成させた最新アルバム『aRange』の制作背景、そして現在開催中のツアーで感じている手応えや変化についても聞いた。
Esquireは自分の中のギターの世界を一気に広げてくれた
──みなさんにとって、フェンダーというブランドはどんなイメージですか?
北村匠海(以下:北村) 初心者にもプロにもイエスと言ってくれるブランド、というイメージがあります。手に取りやすいものもあれば、頑張って手を伸ばしたくなる一本もある。そういう懐の深さが魅力ですよね。最初の頃は、フェンダーって少し敷居が高いものだと思っていました。種類もたくさんあって、どれを選べばいいのかわからなかった。でも今思えば、どれに手を出してもよかったんですよね(笑)。今はテレキャスがメインですけど、特にEsquireを買った時は大きかったです。あの一本が、自分の中のギターの世界を一気に広げてくれた。今でも“なんで自分はEsquireを使ってるのか”をメンバーに語ってしまうくらい、大きな出会いでした。
橘柊生(以下:橘) 僕はフェンダーというとハマ・オカモトさんのイメージが強いです。兄貴みたいな存在でもあるので。フェンダーって、渋くてカッコ良くて、男が大型バイクに憧れるみたいな感じがある。自分もギターが弾けたらなあ…と思わせてくれる憧れの存在ですね。
泉大智(以下:泉) フェンダーと言えば、往年のギターヒーローのイメージですね。カート・コバーンやジョン・フルシアンテが持つ、JaguarやMustangみたいな個性的なモデルの印象も強いです。自分が使っているMeteoraも、最初は見た目に惹かれたんですけど、実際に弾いてみたらすごく使いやすかった。やっぱりフェンダーって、見た目も含めて手に取りたくなる魅力があると思いますね。
矢部昌暉(以下:矢部) 僕も匠海と同じで、使ってきたギターがいわゆる王道ではなかったので、最初は少し敷居が高いイメージがフェンダーにはありました。でもバンドを続けていくうちに、気づいたらいつの間にかそばにいる存在になっていて。やっぱり安心感がありますよね。
──4月にリリースされたニューアルバム『aRange』についても聞かせてください。今回は100曲以上のデモの中からメンバーの皆さんで選んで作ったそうですが、どんなところにこだわりましたか?
北村 今回はアレンジが大きな軸になっていて、一曲一曲の可能性をアレンジャーの方や自分たちの頭の中で広げていくことで、この5〜6年の歩みがあらためて見えてきた感覚がありました。自分たち主導で動き始めた2020年以降の時間が、そのままアルバムに表れている気がします。
泉 今回は本当にシンプルに、自分たちがやりたい曲を集めた感じがありますね。デモにはまだまだいい曲がたくさんあるので、ある意味“選びたい放題”だったというか。そこから厳選していった感じです。タイトルが『aRange』なので、アレンジ(編曲)によって化けそうな曲かどうかも、選ぶ基準の一つになっていましたし、その作業自体すごく楽しかったです。
橘 今、僕らの持ち曲って200曲くらいあるんです。かなり多いほうだと思うし、そのぶんジャンルの偏りもどうしても出てくる。だから今回は、あまり被っていないジャンルの曲を選んだり、逆に被っていても“それでもこの曲は出したい”と思えるものを選んでいった感じでした。2曲を組み合わせた曲もあったりして、アレンジの面でもかなり幅が出たと思います。
矢部 今回はアレンジがテーマだったので、これまで以上に音作りに時間をかけました。いろいろ試しながら、“もうちょっとこうだな”とか“ここはこうしたほうがいいな”とか、アレンジャーの方やいろんな人と話しながら作っていった感じです。自分の持っているギターもいろいろ持ち込んで、音の違いを細かく見ながら探っていきました。
北村 「ヒーロー」は4人で作った曲なんですけど、最近の流れとしては、作曲は基本的に大智と柊生が担っているので、“今この二人がいいと思うものを信じよう”という感覚はすごくありました。みんな考えることも違うし、頭の中も違う。だからこそ、自分が信頼しているメンバーがいいと思うものをちゃんと信じることが大事だった。その上で、自分はそれをどう言葉として世界に置くか、どう表現するかに向き合っていたと思います。曲によって作られた時期も関わり方も違うからこそ、自然とバラエティが広がっていったんだと思います。
言葉ではうまく伝えられないことも、音楽なら表現できる
──それだけ幅広い楽曲群を、ライヴで演奏する手応えは?
北村 今、ツアーを廻っていますけどすごく新鮮です。曲によって今まで感じたことのない感情や時間が生まれるし、それを受け取るファンのみんなの感じ方もきっと新しい。その新しさが、いい方向に道を作ってくれている気がします。“アレンジ”という意味を持つアルバムを携えてのツアーだからこそ、変わっていくことを否定しないほうがいいとも思っていて。昨日良かったものが、今日はまた違うかもしれない。僕らも観てくれる人もスタッフも、それくらい感度を高くしていくべきツアーなんじゃないかなと。その意味すら日々アレンジされていくような作品なんだと思います。
泉 本当にやっていて楽しいですし、自分のマインドも変わってきています。ライヴに向き合う感覚が今までと全然違っていて、すごくフラットな気持ちで音楽ができているというか。悪い意味で気負っていないし、純粋に音楽を楽しめている感覚があります。しかも全曲自分たちで作った曲なので、自分たちでやっている感覚が細かいフレーズや演奏にも出る。それがすごく面白いし、楽しいです。
橘 僕も純粋に“音楽してるな”という感覚がありますね。余計なことを考えずに、音楽のことだけを考えている時間がすごく増えました。今まではライヴ中に、お客さんの反応とかいろんなことが頭をよぎる瞬間もあったんですけど、今回は自分のピアノのタッチの強さだったり、匠海の声と自分の音の混ざり方だったり、自分が弾いていない時に他の音がどう鳴っているかだったり、本当に音楽そのもののことを考えている時間が多い。それが“音楽してるな”という感覚につながっています。
北村 “うまくやろう”じゃなくなった感じがあるよね。
橘 そう。“うまく見せよう”が今回は違う気がする。
北村 “ライヴしよう”って感覚なのかもしれないですね。今までは積み上げてきたものや計算してきたものをうまくやって成功させる、という感覚もあったけど、今回は“いいライヴをしよう”“いい音を出そう”“いい歌を歌おう”に集中できている。その日ごとの正解が必ずある、というのが今回のツアーのテーマな気がしています。
矢部 個人的には、レコーディングでかなり音にこだわったぶん、ライヴでどう再現するかをずっと考えています。直前まで音作りで悩んでいるし、終わってからもローディの方といろいろ話していて。今回はコーラス用のマイクも変えてみたりしていますし、音作りに関してかなり重点的に試しているツアーだと思います。
──では最後に、これから楽器を始める人、続けている人に向けてメッセージをお願いします。
橘 “好きこそものの上手なれ”だと思います。でも、最初はよこしまな気持ちだけでも全然いいと思うんです。モテたい、とか(笑)。ギターがうまい人って本当にカッコいいし、楽器ができる人ってそれだけで魅力的に見える。最初はそれくらいの気持ちで始めてみてほしいですね。
泉 一人で演奏するのも楽しいですけど、誰かと音を合わせた時の喜びって、他ではなかなか代えがたいんです。音楽で一つになった瞬間を味わえたら、きっと“音楽って楽しいな”と思えるはずなので、そういう瞬間を目指してやってみてほしいです。
矢部 楽器って、自分の感情をさらけ出せるすごくいいアイテムだと思っています。嫌な時は無理に触らなくてもいいし、触りたい時にはたくさん触ればいい。言葉ではうまく伝えられないことも、音楽なら表現できることがある。だから、自分の感情に寄り添ったり、外に出したりするためのものとして、生活の一部にしてもらえたらいいなと思います。
北村 最近、“ビッグバンで地球が生まれた時にも音はしていたはずで、人間はそのずっと後に生まれた存在なのに、音(音楽)を完全に理解しようとするのはおこがましいよね”みたいな話を見て、すごく共感したんです。僕らは未知のものに触れているんだなって。だからこそ面白いし、バンドやギター、ベースって、“一緒にバカになろうぜ”ってできるものでもあると思う。そういう世界の入口に、フェンダーのギターがあるのはすごく素敵なことだと思います。

Vintera III Late ’60s Stratocaster | 75th Anniversary American Professional Classic Cabronita Telecaster
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北村匠海(Vo,G)、矢部昌暉(Cho,Gt)、橘柊生(DJ,Key)、泉大智(Dr)で構成される4人組バンド。結成15年目。代表曲「猫」の累計再生回数が10億回を突破し、2021年末に紅白歌合戦初出場を果たした。全員が楽曲制作に携わり精力的にリリースを続けている。近年は音楽フェスへ多数出演し、3年連続アリーナ公演で成功を収めた。4人は俳優業やソロプロジェクト、DJなど、個々でも活動を行っている。2026年4月1日に6thアルバム『aRange』をリリースした。
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