Cover Artist | 新藤晴一(ポルノグラフィティ) -後編-

フェンダーは“飾る芸術品”というより、ミュージシャンやバンドキッズに寄り添う存在

「Cover Artist」の後編では、ポルノグラフィティのギタリスト・新藤晴一がフェンダーとの出会いから現在のブランド観までを語る。74年製のストラトとの出会い、ジョン・イングリッシュ製Telecasterを経て、頑丈さと革新性を兼ね備えたフェンダーへの信頼が深まっていったという。また、最新ライヴ映像作品や新曲「THE REVO」、さらには年末のぴあアリーナ公演やアルバム制作の裏側についても言及。最後には、これからギターを始める人やバンドを組みたい人への熱いメッセージも届けてくれた。


“変わろうとする姿勢”と根本にある頑丈さがフェンダーの一番の魅力

──フェンダーのギターに初めて出会った瞬間は覚えていますか?

新藤晴一(以下:新藤) 当時はX JAPANの影響もあって、バンドブームの頃はハムバッカーが主流でした。僕自身も自然と他社製のギターを弾いていたんですけど、最初に買ったフェンダーは1974年製の中古のストラト。今でこそヴィンテージですが、当時はただの“古いギター”で14〜20万円くらいでしたね。それまでのハムバッカーモデルとはスケールも違って、正直、弾きにくいと感じました。今思えば、その個体がたまたまそうだっただけかもしれませんが(笑)。

──その後、本格的にフェンダーを使い始めたのは?

新藤 プロになってしばらくしてからです。マスタービルダーのジョン・イングリッシュが手がけた黒いTelecasterを手に入れたのが大きかった。自分でも“これは似合ってる”と思える一本でした。当時はエイジド加工のモデルが珍しく、それも新鮮で。そこからフェンダーに対する印象がガラッと変わったんです。

──フェンダーというブランドに対して、今はどんなイメージをお持ちですか?

新藤 最初の印象は頑丈でタフ。フェンダーは壊れにくいし、壊れても直して使える。だから“飾る芸術品”というより、ミュージシャンやバンドキッズに寄り添う存在。いい意味でずっと触っていられる“おもちゃ”のように身近な楽器、というイメージでした。

──そこから今に至るまでで、印象に変化は?

新藤 すごく変わりましたね。以前は“ギターテックの人がFenderって書いてあるTシャツを着てる”みたいな、プレイヤー寄りのイメージが強かった(笑)。でも今は、原宿にできたストアはまだ行けていないんですが、そういった展開も含めて、とても洗練されたブランドに見える。今日も衣装(F IS FOR FENDER)とギターをフェンダーで合わせてみましたが、普通におしゃれでカッコいいと思いました。

──ブランドの姿勢についてはどう感じますか?

新藤 フェンダーはヴィンテージの再現モデルを作り続けながら、常に新しいことに挑戦している。昔はレースセンサーやノイズレスピックアップ、最近ではAcoustasonicなどもある。クラシックを守りつつも、新しい方向に果敢に進んでいく。その“変わろうとする姿勢”と根本にある頑丈さ。この両方を兼ね備えているのがフェンダーの一番の魅力だと思います。

──ポルノグラフィティとしての最近の活動について伺いたいです。9月3日にリリースされた映像作品『因島・横浜ロマンスポルノ’24 〜解放区〜』の見どころを教えていただけますか?

新藤 これまで何度もライヴをやってきましたが、自分たちの地元・因島で実現できたのは本当に特別でした。島は小さくて、普段は大きなイベントを開けるような場所ではないんです。そんな中で“25周年は因島でやろう”というスタッフの提案もあって実現したのは、すごく嬉しかった。音楽活動を超えて、バンドが“地元に人を呼び、お祭りを作れる存在になった”という実感がありました。

──地元でやる意義があったんですね。

新藤 人を集めて、みんなでお祭りを作る。その雰囲気を地元で味わってほしかったんです。一方で横浜公演は環境が整っていて、ホームグラウンドのような安心感があった。因島は“ここでやる意味”を自分たちに問いかけながら挑んだライヴで、横浜は純粋に環境を楽しめたライヴ。その対比が作品にしっかり映し出されていると思います。


“人間くさい時間”を、ギターを持ったならぜひ経験してほしい

──10月に先行配信、11月にパッケージリリースされる新曲「THE REVO」の聴きどころは?

新藤 ギタリスト的にはすごくコピーしやすい曲ですね。アルペジオとコードでギター2本が役割を分担していて、コード進行もシンプル。文化祭で“やってみようぜ!”と言えば、3日後にはもうステージでできるんじゃないかと(笑)。歌えるかどうかは別として、バンドマンの心をくすぐるような曲ですし、疾走感もあって、きっと文化祭でも盛り上がると思います。

──12月には、ぴあアリーナでの公演〈みなとみらいロマンスポルノ’25 ~THE OVEЯ~〉がカウントダウン公演も含めて控えています。意気込みを聞かせてください。

新藤 カウントダウンを含めて、年末にライヴをやれるのはとても特別なことです。この時期は誰にとっても特別な時間。その時間を僕らと一緒に過ごすことを選んでくれたファンの皆さんに“来て良かった”と思ってもらえるようにしたい。選曲や演出も“さすがわかってる”と感じてもらえるようなものにしたいですね。テレビのように不特定多数に向けて演奏するのではなく、会場に足を運んでくれた人に全力で応える。その意識で臨みます。

──アルバムの制作も進めていると伺いました。

新藤 はい、2026年にリリース予定で、今まさに制作中です。“働きすぎじゃないか?”と言いたくなるくらい(笑)、盛りだくさんな状況ですが。でも、僕らの強みは“生産性の高さ”だと思います。ロックバンドには苦悩や衝突といったナラティヴが好まれるけど、僕らはそういうタイプではなく、むしろスキルを出し合い、スタッフを含めたチームワークで活動を律してきたからこそ、続けてこられた。これも一つのバンドの形だと思っています。

──最後に、これからギターを始めたい人や、始めたばかりの人へメッセージをお願いします。

新藤 僕が伝えたいのは“人と一緒に音を出す楽しさを知ってほしい”ということです。もちろん今はDTMで音楽を作る時代で、僕自身もやっていますし、それを否定するつもりはありません。ただ、やっぱりバンドを組んで誰かと合奏してみると、そこにしかない濃密な時間があるんです。
リハスタに入ってギターやベースやドラムを鳴らすと、大体は音が大きすぎるとかで文句を言い合ったり、緊張してライヴで失敗したり、喧嘩になることもある。でもそれを乗り越えて一緒に飲む酒は格別に美味い(笑)。そういう“人間くさい時間”を、ギターを持ったならぜひ経験してほしい。

──それこそがバンドの醍醐味ですよね。

新藤 リズムが合う、ハーモニーが響く──そういった音楽的なことも大事ですが、仲間と音を合わせる時間そのものが一番楽しい。ギターを持つというのは、その世界に飛び込む“権利”を手にしたということだから。せっかくその権利を得たなら、ぜひバンドを組んでみてほしいと思います。

American Ultra Luxe Vintage ’50s Telecaster(Butterscotch Blonde)

>> 前編はこちら

シャツ ¥41,800(税込)、パンツ ¥36,300(税込)/F IS FOR FENDER(エフ イズ フォー フェンダー)


新藤晴一
広島県因島出身。ロックバンド、ポルノグラフィティのギタリスト。
1999年、1stシングル「アポロ」でメジャーデビュー。翌年2000年7月には3rdシングル「ミュージック・アワー」をリリースし、この夏の話題曲となる。以降「アゲハ蝶」「メリッサ」「ハネウマライダー」「オー!リバル」「THE DAY」などヒット曲を連発する。
ポルノグラフィティの楽曲の作詞・作曲はもちろん、多くのアーティストへ詞の提供も行う。
また、小説『時の尾』(2010年)、『ルールズ』(2017年)を出版するなど、言葉を使ったクリエイティブな才能が高く評価されている。
2023年自身初となるプロデュース・原案・作詞・作曲を手がけたミュージカル作品「ヴァグラント」が、東京・明治座、大阪・新歌舞伎座で上映されるなど幅広い活動をしている。
デビュー25周年を迎えた2024年9月、アニバーサリーライヴ『因島・横浜ロマンスポルノ’24 ~解放区~』を広島・因島運動公園と神奈川・横浜スタジアムにて開催。
2025年4月にはNHK広島放送局『被爆80年プロジェクト わたしが、つなぐ。』のテーマソング「言伝 ―ことづて―」をリリース。
11月19日にアニメ『僕のヒーローアカデミア FINAL SEASON』のOPテーマ曲「THE REVO」のリリースを控える。
12月28日(日)29日(月)31日(水)に、ぴあアリーナMMにてカウントダウンライヴ『みなとみらいロマンスポルノ’25 ~THE OVEЯ~』の開催、さらに2026年には13枚目のアルバムリリースと全国ツアーの開催を予定している。
http://www.pornograffitti.jp/

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