Special Interview | 奥田民生

日本のキングオブロック、故・忌野清志郎が愛したフェンダーのEsquireを忠実に再現した「Kiyoshiro Imawano 1963 Esquire Journeyman Relic」のインプレッションを、清志郎ゆかりのアーティストが語るインタビュー。今回登場する奥田民生はたびたびトリビュートライヴにも出演し、「スローバラード」をはじめ忌野が残した名曲の数々をカヴァーしてきた。その奥田が「Kiyoshiro Imawano 1963 Esquire Journeyman Relic」をつま弾きながら、彼ならではのユーモアを交え、清志郎との思い出や彼の音楽に対する思いを語ってくれた。

※「Kiyoshiro Imawano 1963 Esquire Journeyman Relic」の受注締切は9月5日(木)までとなります。


どういう状況でも音楽をできるのが一番すごい。できそうでできないんですよ

──忌野清志郎さんの音楽と出会ったのはいつ頃でしたか?

奥田民生(以下:奥田) 高校の時には聴いていました。気づいたら、もう周りが知っていたんですよ。だから、いつどんなきっかけで聴いたかは憶えてないけど、カヴァーしている人たちもいたから、そんな感じで知ったんでしょうね。RCサクセションが広島に来た時はライヴも見に行きました。ちょうど自分もバンドを始めた頃だったから、憧れも親近感もあったし。

──どんなところがカッコ良かったですか?

奥田 ライヴを見たのはホールだったんですけど音がでかくて。でも、エフェクターをそんなに踏んでいる感じでもなくて、シンプルでいいなと思いました。ただその頃、僕はギタリスト志望だったから、言っちゃうとCHABOさん(仲井戸麗市)ばっか見てたんです(笑)。っていうか清志郎さん、独特すぎるから。RCの曲とか清志郎さんの曲とか、自分でもやってみたいと思って歌うとまるで違うじゃないですか。だから何て言うのかな、やり甲斐がないんですよねって言ったら語弊があるかもしれないけど、清志郎さんには勝てないんですよ。


──まさに唯一無二の存在だと。

奥田 そういう印象がずっとあります。だからカヴァーもさせてもらいますけど、清志郎さんの歌は清志郎さんの歌なんで、本当はカヴァーなんてしちゃダメなんですよ。それなのに何度もやらされて(笑)。だって、ああいうふうにはできないですから。“清志郎さんとは違う”って言われたら、もう“はい”って言うしかないじゃないですか。

──確かに(笑)。初めて清志郎さんにお会いしたのは?

奥田 いつですかね。何かのイベントで会っていると思うけど、最初は挨拶しただけですよね。ただ、知り合いの知り合いみたいな人たちがいるから、何度も会っているうちに“君も出ろよ”みたいな空気ができて、デビュー30周年記念の〈RESPECT!〉ってイベントに出演させてもらったんです。

──奥田さんにとって清志郎さんはどんな存在ですか?

奥田 ヴォーカリストとして異様に上手い。音程の正確さも含め、あんなに上手い人はそんなにいないと思います。みんな、あの歌い方で持っていかれちゃってるけど。その点ですごくリスペクトしてますね。

──同じギター&ヴォーカルとしては?

奥田 清志郎さんってギターを持って、どこにでも行って、うわってやるじゃないですか。RCを含めていわゆるバンドもやるけど、そうじゃなくても、ギターだけで“何でも来い”ってやるじゃないですか。そこがね、やっぱりいいなと思います。バンドがないとやらないとかじゃない。どういう状況でも音楽をできるのが一番すごいと思いますね。できそうでできないんですよ。

──奥田さんもやっていらっしゃるじゃないですか。

奥田 そういうふうになれるように、って考えてやってきましたけどね。

──さて、ここからはKiyoshiro Imawano 1963 Esquire Journeyman Relicのインプレッションを聞かせていただきたいのですが、清志郎さんがピックガードを水性ペンでピンク色に塗ったフェンダーのEsquireを弾いているところをご覧になったことはありますか?

奥田 弾いている姿はそんなに覚えてないけど、このギターは印象に残ってますよ。ピンク色の変なギター(笑)。いや、だってこれは変でしょ(笑)。

──実際、弾いてみていかがですか?

奥田 すごくしっかりしていますよ。ピックアップの切り替えをセンターにした時、普通のセンターの音じゃなかったからびっくりしましたけど、ちょっとフェイズがかかるのが特徴ですね。

──さっき弾きながら、不思議な音とおっしゃっていましたね。

奥田 うん、新鮮でした。

──もし奥田さんがこのギターを今後使うとしたら、どんなところで使いますか?

奥田 でも、これ恥ずかしくないですか(笑)? 絶対に“清志郎さんのやつじゃん”って言われますよね。もちろん全然普通に弾けますよ。それは当たり前です。ギターとしてもちゃんとしてます。でも、やっぱりこれはリスペクトなものなので恐れ多い。ファンの方が買うのはいいけど、俺は使っちゃダメなんじゃないですか。いや、ダメってことはないけど、色を塗り替えるしかないでしょ。

──ピックガードの色ですね?そう言えば別にもう一枚、白いピックガードが同梱されているそうです。

奥田 なるほど。もう一枚付いているんだったら、ピンク色のまま写真を撮って、白に替えて、好きなようにするっていうのもやり方としてはいいですよね。でも、ファンの方はこのまま、清志郎さんみたいにピンク色の塗料が剥げるまで弾くのがいいと思います。

──ところで話は変わりますが、以前、フェンダーのギターは苦手だと著書に書かれていたそうですね。

奥田 いや、苦手っていうかテンションがきついから、軟弱な僕には手が痛いっていうのもあるんですけど、うまく音が鳴らないってずっと思っているんですよ。音が鳴らないっていうのは、例えばジミヘンとかリッチー・ブラックモアとか極端じゃないですか。あれがいわゆるストラトの音なのかと言ったらちょっと違うような気もするけど、ああいうサウンドに憧れてたんで。あと、僕はギターの位置がちょっと低いんですよ。年々上がってはきているけど、“ストラトでそれは違う”っていう説があるじゃないですか。だから“この世で一番ストラトが似合わない”って言われるんだと思うけど、ジミヘンとかリッチー・ブラックモアとかジョン・フルシアンテも低くないでしょ? その先人たちのせいですよね。先人たちに俺のスタイルが当てはまる人がいなかったっていう(笑)。でも、これからその苦手意識を克服したいと思っているんですよ。

──最後にギターを始めようと思っている人にメッセージをお願いします。

奥田 ギターって楽器の中では簡単なほうだと思うんですよ。指は痛いけど、コードを覚えればギターを弾きながらとりあえず歌えるじゃないですか。その意味ではハードルが低いし、音楽をやるのに一番だと思うんです。だから、音楽をすごくやりたいとか歌いたいっていう人が持つべきものだと思います。もちろん速弾きにいくのもありだけど、僕はどちらかと言うとバンドで演奏がしたくてやっているから、バンド演奏のための道具というか、そういうことでギターをやるのは簡単だからやったほうがいいと思います。あとはやっぱり見た目ですよね。他にも楽しみがいろいろあるから、今の若い人たちがギターを持って立っている姿を見て“おぉ!”って思うのかわからないけど、僕らはもうジミー・ペイジの見た目で“あれをやりたい”って思いましたからね。何だかよくわからないけど、ツマミとか棒とか、ギターに付いているものも含めてカッコいいわけですよ。

──棒っていうのはトレモロアームのことですね(笑)。

奥田 だって、僕が一最初に買ったギターって実はストラトタイプなんですけど、なぜそれにしたかって言うと棒が付いていたからなんですよ(笑)。

──なるほど。ギターを選ぶ時は難しく考えず、それぐらい直感に従えと。

奥田 それは大事だと思います。僕はその時まだ誰がどのギターを使っているかなんて知らないから、棒が付いているのと付いていないのを見比べて、やっぱり付いているほうがカッコいいって感じで選んだ。 それくらいの感覚でいいんだと思います。


奥田民生
65年、広島生まれ。87年にユニコーンでメジャーデビュー。94年にシングル『愛のために』でソロ活動を本格的にスタートさせ、『イージュー★ライダー』『さすらい』などヒットを飛ばす。また、井上陽水とのコラボや、PUFFYや木村カエラのプロデュースを手がけるなど幅広く活躍。さらに、世界的なミュージシャンであるスティーヴ・ジョーダン率いるThe Verbsへの参加、岸田繁(くるり)と伊藤大地と共に結成したサンフジンズ、斉藤和義・トータス松本ら同世代ミュージシャンと結成したカーリングシトーンズの一員としても活躍している。2015年に50歳を迎え、ラーメンカレーミュージックレコード(RCMR)を立ち上げ、2024年10月26日(土)と27日(日)に両国国技館にて〈ソロ30周年記念ライブ「59-60」〉を開催する。
https://okudatamio.jp

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