Special Column | American Vintage II 1954 Precision Bass®︎
オリジナルスペックを追求し、50〜70年代を鮮やかに彩った名機たちを可能な限り忠実に再現したAmerican Vintage IIシリーズ。楽器業界のみならず、音楽シーンにも多大な影響を与えた名機たちの実像に迫りながら、American Vintage IIシリーズの魅力を紐解いていく。第2回は、American Vintage II 1954 Precision Bassをフィーチャー。
エレクトリックベースの原点を感じることができるプリミティヴなサウンド
マイケル・ジャクソンのプロデューサーとしても知られ、伝説のアルバム『Thriller』をプロデュースしたことでも知られるアメリカの偉大なジャズミュージシャン、クインシー・ジョーンズ。彼に“音楽を永遠に変えた唯一の技術的進歩である”と言わしめたのが、フェンダーのエレクトリックベースだ。
51年に誕生したPrecision Bass®︎が発売されるまで、ベースはフレットレスのアップライトベースが主流であり、ギターと同じように肩からストラップで弾くスタイルではなかった。つまり、レオ・フェンダーが開発したPrecision Bassはベーシストの演奏スタイルを一変させ、クインシーの言葉通り演奏技術や音楽そのものを進化させた楽器となっていく。ちなみに、モデル名のプレシジョンとは“正確な”という意味で、フレットがあることで誰でも正確な音程が鳴らせるベースということから名付けられている。
レオがなぜ世の中にないデザインのアップライトベースを作ったかという点において、彼は“当時そういうニーズがあった”という内容の発言をしている。そのニーズを的確に汲み取り、プレイヤーにとって使いやすい楽器として成立させてしまうのが、レオが天才と言われる由縁だろう。51年に誕生したPrecision Bass、60年から発売され当時上位機種とされていたJazz Bass®︎は、現在でもエレクトリックベースの代表モデルとして愛され続けている。
新たなAmerican Vintage IIシリーズにおいても、エレクトリックベース黎明期と言える54年製のPrecision BassをリイシューしたAmerican Vintage II 1954 Precision Bassがリリースされ、その完成度の高さから話題となっている。
57年途中までのPrecision Bassは、今回登場したAmerican Vintage II 1954 Precision Bassのように現代では一般的となっているPrecision Bassのデザインとはやや異なったボディ形状で作られていた。これはTelecaster®︎(※初期はBroadcaster®︎)をもとに考えられたデザインで、そのためピックアップもシングルコイル、そして弦は裏通しという仕様だ。メイプル1ピースネックのヘッド形状もTelecasterに近い。そのため、この時期のPrecision Bassを“テレキャスターベース”と呼ぶ愛好家もいる。
初期はTelecaster同様、コンター加工のないスラブボディだったが、54年途中からはStratocaster®︎で採用されたボディカーブかつコンターボディへとバージョンアップ。今回登場したAmerican Vintage II 1954 Precision Bassは、その時期の個体をリイシューしている。
ボディにはアッシュ材の木目が透けて見えるブロンドフィニッシュが施され、黄変していない状態が採用された。ちなみに、54年後半からはストラトと同様、2トーンサンバーストがPrecision Bassでもレギュラーカラーとなったが、2トーンサンバーストのみ今回のリイシューではオンライン限定販売となる。もちろん、ボディは薄いニトロセルロースラッカーでフィニッシュされている点も特徴。ピックガードは1ピースの白い樹脂製が再現されている。
メイプルの1ピースネックは、当時のシェイプを参考にした太めの1954“C”シェイプ。ただし現代的な演奏性も考慮され、そこまで太過ぎず握りやすい。もちろん、指板面には7.25インチラジアスのアールが付けられ、ヴィンテージタイプのトールフレットが20フレットまで打たれている。ヘッドにオープンギアの逆巻のペグが付いている点も、ヴィンテージファンには見逃せないだろう。
音質の大きな特徴となるピックアップには、Pure Vintage ‘54 Single-Coil Precision®︎が搭載され、音の重心が低く太く温かみのある音色を生み出す。これは、当時の仕様を再現した樹脂性サドルの影響も少なくない。この存在感のある音は、トラディショナルな音楽はもちろん、アコースティックギターが入るようなオーガニックなアンサンブルなどでも使いたくなるはず。また、音の芯がしっかりとしているため、エフェクターなどを多用しても繊細な演奏のニュアンスが残るように感じられた。
現代では、Jazz Bassを筆頭に多様なサウンドが生み出せるエレクトリックベースも数多く存在するが、だからこそ初期のPrecision Bass特有のプリミティヴなサウンドが輝いてくる。このAmerican Vintage II 1954 Precision Bassを手にすれば、エレクトリックベースの原点を感じることができると同時に、現代だからこそ生まれる新たな音楽が誕生するかもしれない。
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第1回:American Vintage II 1951 Telecaster
第2回:American Vintage II 1954 Precision Bass
第3回:American Vintage II 1957 Stratocaster
第4回:American Vintage II 1966 Jazzmaster
第5回:American Vintage II 1966 Jazz Bass
第6回:American Vintage II 1972 Telecaster Thinline